南村喬その後の画業

Posted by モロズミ・ダン on 12.2017 巨匠・アーティスト 0 comments 0 trackback
前回は
南村先生の昭和30年代の作品を中心にみてきたが
その後の昭和50年前後の作品に
スポットを当てたい。

南村先生は平成9年に亡くなられているので
後期の画業にあたる。

その間の40年代はどうしたの?
と思われるかもしれないが
約1年半前にアップした南村喬特集の4回目
「実力派の画業アイデンティティー」(←クリック)
をご覧いただきたい。
この40年代はそれまでの時代活劇に留まらず
戦記、怪獣、恐竜、妖怪、SF物と
作品の幅もかなり広げていった時期といえるだろう。

でも個人的にはやはり時代活劇!
これに絞って進めさせて下さい。


笛の音色まで聞こえてきそうだこの迫力!

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新諸国物語「笛吹童子」 カラーシート 朝日ソノラマ発行
原作:北村寿夫  作画:南村喬之 TBS

北村寿夫の新諸国物語シリーズでも
一番人気だった「笛吹童子」
挿絵担当は南村先生だ。

ちなみにこのシリーズは7作あって以下のとおり

白鳥の騎士(昭和27年)
笛吹童子(昭和28年)
紅孔雀(昭和29年)
オテナの塔(昭和30年)
七つの誓い(昭和31年)
天の鶯(昭和34年)
黄金孔雀城(昭和35年)

前回紹介した「オテナの塔」もこのシリーズのひとつだ。

「笛吹童子」は昭和28年のNHKラジオドラマが最初で
テレビドラマとして2回目のシリーズがTBSの放送で
昭和47年であった。
カラーシートはTBSのクレジットがあるので
この時期に発売されたものだと思われる。
南村先生の晩年の作品と言える。

ストーリーは置いといて
作画を連続でみてみましょう。

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新諸国物語「笛吹童子」 カラーシート 朝日ソノラマ発行
原作:北村寿夫  作画:南村喬之 TBS

どーですかこの上手さ!
緻密で迫力のある画風も
さらに熟成していて
極上の作品に仕上がっている。

もし漫画遺産なるものがあったとしたら
是非、強引に認定したいところだ。



ふたたび挿絵で実力発揮

次の作品はさらに進んで昭和50年頃(だと思う)
貴重な原画(コホン!直筆の本物です、数年前ヤフオクで落としました)
で紹介します。

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原作:山岡荘八作画:南村喬之 文:大川久男

「徳川家康」(山岡荘八)をベースに
テレビアニメ化(昭和50年~)されたことを受けて
テレビマガジンに連載された絵物語である。

ちなみにテレビマガジンは
講談社昭和46年創刊のロングセラーで
今でも人気刊行中の月刊誌。

「少年徳川家康」連載当時の表紙は
       テレビマガジン
ロボコンやマジンガーZなどが躍動してて
そんな中
少年徳川家康は地味ではあるが
頑張っていたのだ。

当時は私もすでに高校生だったので
リアルタイムではみておらず
後にこの貴重な作品の存在を知ることになった。

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アップしてみたくなる
このペンタッチ!

連続してピックアップするが

ストーリーの進行順になっているかは
ゴメン分かりません。

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原作:山岡荘八作画:南村喬之 文:大川久男

あらためて
絵物語の挿絵
この場所で画く作品は
南村先生の真骨頂
と言えるのではないだろうか。

南村作品は絵物語(時代活劇)の挿絵として
最高に輝きを増すようだ。

時代活劇絵物語から始まって
中期には
あらゆるジャンルでその能力を発揮するも
やはりここへ帰ってきたんだな
と思う。

活き活きとしたそのタッチは
原画で観ているという分を差し引いても
あり余るほど感じられるのだ。



次回
南村先生シリーズの番外編を予定します。

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その表紙絵に引き寄せられた

Posted by モロズミ・ダン on 22.2017 巨匠・アーティスト 2 comments 0 trackback
1年半位前にアップした
この記事
「奇怪な表紙絵に幻想が膨らむ」(←クリック)
はご覧になっただろうか。

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「妖気まだら蟇」 太平洋文庫 昭和33年発行より
表紙絵:南村喬


貸本漫画の表紙絵や
絵物語の挿絵で活躍されていた
南村喬先生の特集だった。

その時は4回にわたって
駆け足で紹介したが
今日はその5回目をやらせていただきたい。


子供が喜ぶ時代活劇

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「にんじゅつ 左近」 幼年ブック5月号付録 集英社 昭和32年発行
作画:南村喬  原作:青木義久

貸本では
ガマが火炎を吐いていたが
こちらはゴリラの怪物が毒ガスを噴射!

共に同時期に発行されているが
画風がちょっと異なる。

「妖気まだら蟇」
=昭和初期の紙芝居、絵物語、大衆演劇のチラシなどを
イメージさせる劇画調(大人向)と
「にんじゅつ 左近」
=比較的クセもなく繊細で
分かりやすく画きあげる絵物語調(子供向)

やはり青年向けと幼年向けの対象によって
意識して画き分けていたのだろうか。

内容をピック。

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「にんじゅつ 左近」 幼年ブック5月号付録 集英社 昭和32年発行
作画:南村喬  原作:青木義久

幼年者が対象のため
ひらがな中心の吹き出し
漢字にもルビがふってある。

悪の大蛇やゴリラの怪物などに
忍術で立ち向かう筑紫左近が繰り広げる時代活劇
子供が大いに喜ぶ設定だ。

このような作品に親しめば
きっと正義感の強い人に成長するだろう。

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「にんじゅつ 左近」 幼年ブック5月号付録 集英社 昭和32年発行
作画:南村喬  原作:青木義久

裏表紙もアップしておこう。
左近の妹(たちばな)
があまりに美しかったので。
映画化したら八千草薫さんあたりが適役か。


続いては

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「はやぶさ童子」 幼年ブック3月号付録 集英社 昭和30年発行
作:南村喬  


絵物語作家としてのデビュー作であるが
繊細で迫力ある画力はすでに兼ね備えていて
思わず作品に引き込まれてしまう。

南村喬(みなみむらきょう)
とルビがふってあるが
「みなみむらたかし」としているものもあり
当時どちらの発音が正しかったのかは
わからない。

晩年は「南村喬之(みなみむらたかし)」
で間違いない。

はやぶさ童子は
作画、原作とも南村先生の作で
お話はこんな感じ。

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「はやぶさ童子」 幼年ブック3月号付録 集英社 昭和30年発行
作:南村喬  

アラジンの魔法のランプのような機能をもつ
つの笛も登場するのだ。


表紙絵担当は実力者の証

続いては
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「ぎゃらむの洞窟」 幼年ブック12月号付録 集英社 昭和31年発行
表紙絵:南村喬  原作:大林清

これも幼年者向け

内容は

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「ぎゃらむの洞窟」 幼年ブック12月号付録 集英社 昭和31年発行
作画:彩田あきら 原作:大林清

貸本同様
南村先生は表紙のみである。

本は特に
表紙のアイキャッチが重要で
表紙に実力者を登用することは
よくあることだった。

プロ野球で言えば
エース級投手を
毎試合
9回のリリーフ登板させるようなものだろう。

実力者でなければ任せられない
重要なポジションだ。


商品化された希少なかるた

実力がありながら
万人受けするキャラや物語を受け持つことがなかったため
南村作品の玩具の商品化は
ほとんどなかった。

しかし
希少な1点があったので紹介しておこう。

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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

これも昭和30年頃の作品である。
「オテナの塔」は
NHKラジオドラマ新諸国物語シリーズ(1952~1960年)
として1年間ずつ放送された一連の冒険活劇の第4部作目のお話。
アイヌ一族の青年と生き残りの父親(および一族)対
悪代官達の攻防を描く。
アイヌの宝を巡る複数の登場人物達が運命に導かれ
オテナの塔の場所を記した巻物の争奪戦へと
進展、邂逅と対決を繰り広げる・・・
といった内容だ。

私自身もリアルタイムでは知らなかった作品。
大人になって初めて存在に気づいた次第
なので
後になってググッたりした情報が中心であるが
ご了承願いたい。

しかしながら
このかるたも
手抜き一切なしの力作!
是非見ていただきたい。

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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

思いはつのるものの
文字が読めないなら
前途多難だ。

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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

絵が上手!
拡大して
額装したいくらいの出来栄え。

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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

読み札が時代を感じさせる。
呼びかけるではなく
「よばわる」
だ。


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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

答えのない質問をされても
困ってしまいますの札。
これがわかる人は
かなりのオテナの塔通。

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「オテナの塔」かるた NHK放送 日本放送協会承認 小出信宏社
作画:南村喬 原作:北村寿夫

最後は
ちょっと浮かれすぎのような気もするが
やはり
めでたしめでたしの札。


今回も
少し茶化してしまう悪い癖が出てしまったが
これも昭和の玩具に深い愛着のがあることの裏返し
と思っていただければ幸いだ。




次回
晩年の南村喬作品を
直筆原画を中心に紹介する予定です。






実力派の画業アイデンティティー

Posted by モロズミ・ダン on 09.2015 巨匠・アーティスト 0 comments 0 trackback
わかりにくいタイトルで恐縮だが
南村喬作品特集の
4回目をお届けしたい。

このブログは
基本的に
駄玩具探究

これまでも
巨匠・アーチストのカテゴリと言えども
双六やメンコなど
何かしら関連玩具があって
併せて紹介してきた。

しかしながら
南村作品
飛び抜けたヒット作品がなかったためか
関連玩具
残念なことにまったくないのだ。

なので最後まで
作品資料のみで
紹介させていただきたい。

まあ例えて言えば
昔は
お米屋さんと言っても
プラッシーを置いていたし
文房具店といっても
プラモデルを売っていたように
看板商品(カテゴリ)以外の物で
結構力を入れて販売していたこともあった。
今回のケースも
そんな感じで捉えていただければ。
(わかりにくい例えになってしまった)

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少年マガジン ㈱講談社  各誌昭和40年~41年発行より

昭和40年頃の
懐かしい少年マガジンを
何冊かピックアップしてみた。

一時期(昭和35年頃)
時流であった漫画らしい漫画を
請け負っていた南村先生。
だが
その時期ペンネームを使い分けるなど
漫画はやはり本位ではなかったと見え
その後は再び
劇画調の挿絵などを
手がけるようになっていたようだ。

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少年マガジン ㈱講談社  昭和40年2月発行 表紙より

この迫力ある表紙絵
南村喬作品なのです。

作画者名は
中の目次の片隅に
最小の文字で掲載されているので
この作品がだけのものかと認識している人は
ほとんど
いなかったのではと思う。

挿絵系の作画家は
スポットが当たりにくい
まさに影の実力者と言ったところか。

この頃は
ペンネームを
南村喬之(みなみむらたかし)

読みは同じだが
漢字一文字増やしている。
先生
名前にこだわりますなあ。

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少年マガジン ㈱講談社  昭和40年2月発行 より
原作:平井和正/画:南村喬之

この少年マガジンには
絵物語が新連載となっていて
その挿絵担当も
南村作品であったのだ。

原作は「8マン」で有名な
平井和正先生で
実力者同士のタッグで
本格派絵物語と言える。

宇宙エイの目が
ちょっと可愛い気もするが
迫力あるタッチと躍動感ある構図
南村先生本領発揮と言ったところか。

本位でない漫画の仕事から解き放たれ
活き活きと描いているように感じるのだ。

この頃のマガジン
毎号のように南村作品が登場。
ほとんどの人が
作者名も知らずに
ぐいぐいと
その魅力に引き込まれていった。


さらに
紹介しよう。

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少年マガジン ㈱講談社  昭和40年10月発行 より
画:南村喬之

特集:恐竜大画報より

恐竜の雄叫びが聞こえてきそうな迫力!
上手いです。
もう細かい説明なしで
いきましょう。

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少年マガジン ㈱講談社  昭和41年9月発行 より
円谷プロ/画:南村喬之

特集:円谷監督のウルトラ怪獣園
円谷監督が考えた宇宙怪獣のすべて
「きょうふの怪獣星」

昭和30年前後は
時代劇の妖気物が中心だったが
この頃は宇宙や怪獣が大ブーム。
何を画かせても繊細で秀抜
題材にスパッとハマリます。


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少年マガジン ㈱講談社  昭和41年9月発行 より
円谷プロ/協力:東宝映画/画:南村喬之

ウルトラマンやキングギドラ(夢のコラボ)
だってこの通り。

この人の手にかかると
この躍動感
圧巻の出来栄えだ。


まだまだ
南村作品は控えているが
今回はここまで。
またいつか
「その後の南村喬之」(仮題)
ができるよう
資料を整えたいと思う。




繊細かつ大胆な構図に主役の姿が映える

Posted by モロズミ・ダン on 20.2015 巨匠・アーティスト 2 comments 0 trackback
南村喬(1919~1997)作品を
紹介してきた3回目の今日は
貸本表紙絵以外の画業について取り上げたい。
(本記事その3としてアップする予定だったが改題して更新)

昭和30年前半
貸本ブームが落ち着くと
付録の充実を図りつつ
「少年画報」など
月刊漫画誌が勢いを増してきた。

それに合わせるように
南村作品も漫画で
よく見かけられるようになった。

2015_0720_180339-DSC03220.jpg
白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司 漫画:南村喬

南村作品らしい
背景までよく画きこまれている迫力ある画だ。

南村喬(きょう)とルビがふってあるが
一時期そう読ませていたのか
ルビ間違いかは不明だ。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司 漫画:南村喬

この作品は
表紙だけでなく
本編もすべて南村画である。

だいぶ漫画寄りのタッチになっている。
漫画全盛期につき
出版社の意向が強かったのか
時流に合わせた仕事を余儀なくされていたようだ。

ちなみに
東映テレビ映画の実写版は
山城新伍さんが主演で
2015_0720_181147-DSC03228.jpg
付録本の裏表紙にある広告を見ると
しっかり単行本を宣伝していた。

2015_0720_180322-DSC03219.jpg
白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司/田辺虎男/結城三郎 漫画:南村喬

8ヶ月後の白馬童子の付録本。
表紙も完全にすっかり漫画のタッチに
なっている。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司/田辺虎男/結城三郎 漫画:南村喬

だが
余白や背景の書き込みと
躍動感ある構図は健在だ。

ただ
本人としては
この漫画の仕事が不本意だったのか
ペンネームを
矢野ひろし
として活動した時期もあったのだ。

2015_0720_180437-DSC03221.jpg
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流星剣士  集英社 昭和33年12月発行
矢野ひろし

表紙も中身も
すっかり漫画になっている。
でも
剣士の凛々しい表情や格好いい構え
奥行きのある構図は
そのままだ。

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流星剣士  集英社 昭和33年12月発行
矢野ひろし


漫画家として転身したのは
1年足らずの時期だと思うが
まるで熟練の部類の
漫画のタッチとスムーズなコマ割
流石だ。

これくらいは余裕の仕事
とでも言っていたぐらいの実力者だったのか。


この付録本の裏表紙を見て
あっ!と
ビックリ。

2015_0720_180456-DSC03222.jpg

集英社物語文庫「柳生旅日記」
の広告だが
かつて南村喬として制作していた挿絵作品が
単行本となって出版される告知だ。

柳生十兵衛の勇姿、キリッとした目力!
あの貸本表紙時代と同じものだ。

これは編集者の意図しての掲載か
それとも偶然か
新旧の画風が表裏一体に。


しかしながらその後は
漫画誌の特集記事の口絵
需要は少なかったが絵物語の挿絵など
本来の画業にシフトしていったのだ。





奇怪な表紙絵に幻想が膨らむ:その2

Posted by モロズミ・ダン on 15.2015 巨匠・アーティスト 0 comments 0 trackback
南村喬先生の
貸本表紙絵を特集しているが
その魅力は伝わっただろうか。

後半は素敵なタイトル一覧も紹介したが
そこで「あれっ」
と気にかかった人もいるかもしれない。

太平洋文庫の巻末一覧では
作品の著作者名が
それぞれ異なる人が明記されているのである。

実は
本編(中身)は各著作者の作品であるが
表紙のみ
別の作画家が一手に引き受けて
画いていたのである。
(厳密に言うと限られた数人が引き受けて)

昔の貸本や付録本ではよくあったことで
実力のある作画家のみが表紙専任となっていた。

売上アップは表紙で決まる!
と言った感じであろうか
南村作品は表紙を飾るのに
うってつけの評価があったのだろう。

ちなみに
「妖気まだら蟇」(作者:青木末雄)の
本編の画風はこんな感じだ。

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妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄

あれれっ
ずいぶん雰囲気が違うのでは・・・

表紙のイメージで思い込んで選ぶと
この落差に
だまされた感が出てしまいそうだ。

個人的には
この漫画チックなタッチも
これはこれで悪くないなと思う。
どちらかと言うと好きな画風だ。

書き込みが少ないのも
当時の業界の背景を推測すると
貸本漫画の原稿料はかなり安価で
短納期であったことなどが推測され
その悪い環境下での創作であれば
逆によく画いているなあとも感じるのだ。

ストーリーはこんな感じ

2015_0628_214448-DSC03198.jpg
img041.jpg
妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄

目次とまえがきで
だいたい雰囲気がわかると思うが
最後は蟇が倒されてめでたしとなる話。

漫画としては
極めてオーソドックスな展開だが
タイトルの付け方や表紙の力の入れように
グッときますね。

この太平洋文庫
刊行のコンセプトはしっかりしております。

       2015_0628_213112-DSC03187.jpg

奇怪で幻想的なタイトルと表紙からは
ちょっと繋がりにくいような気もするが
思考力・知識の向上や勧善・懲悪の精神高揚など
使命・責任・誇りをもって取り組んでいる
とのことだ。

さて
今回の記事の冒頭で述べた

貸本収集を一度始めたが
数冊を残して処分してしまった理由の件

であるがそれは
手に負えない本の状態の悪さ
からだ。

貸本であり自分の物でないことをいいことに
マナーの悪さが本を見て読み取れる。

ページの折れや破れは著しく
さらに
ミカンの筋・果汁シミ、鼻くそ(だと思う)や
害虫(ブリちゃんなど)などが押し花風になっていたりする。

ミカンを食べながら本をお手ふき代わりにし
ブリちゃんがいたら本で叩き(そして本に挟み)
鼻くそをこすりつけながら読んで
何食わぬ顔で返却していたのだろう。

集めた貸本は
異物の押し花風はなくとも
どれもこれも
破れや解明できないシミを含め
汚れのコレクションとなっており
メンテナンスに限界を感じ
表紙だけ集めようと決めたのだ。

勿論奇跡的に傷みの少なかった
「妖気まだら蟇」など数冊は残したが。

まっ
表紙そのものは特上の力作揃いだし

都合よく理由付けして妥協したのが
いきさつだ。




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