繊細かつ大胆な構図に主役の姿が映える

Posted by モロズミ・ダン on 20.2015 巨匠・アーティスト 2 comments 0 trackback
南村喬(1919~1997)作品を
紹介してきた3回目の今日は
貸本表紙絵以外の画業について取り上げたい。
(本記事その3としてアップする予定だったが改題して更新)

昭和30年前半
貸本ブームが落ち着くと
付録の充実を図りつつ
「少年画報」など
月刊漫画誌が勢いを増してきた。

それに合わせるように
南村作品も漫画で
よく見かけられるようになった。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司 漫画:南村喬

南村作品らしい
背景までよく画きこまれている迫力ある画だ。

南村喬(きょう)とルビがふってあるが
一時期そう読ませていたのか
ルビ間違いかは不明だ。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司 漫画:南村喬

この作品は
表紙だけでなく
本編もすべて南村画である。

だいぶ漫画寄りのタッチになっている。
漫画全盛期につき
出版社の意向が強かったのか
時流に合わせた仕事を余儀なくされていたようだ。

ちなみに
東映テレビ映画の実写版は
山城新伍さんが主演で
2015_0720_181147-DSC03228.jpg
付録本の裏表紙にある広告を見ると
しっかり単行本を宣伝していた。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司/田辺虎男/結城三郎 漫画:南村喬

8ヶ月後の白馬童子の付録本。
表紙も完全にすっかり漫画のタッチに
なっている。

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白馬童子 少年画報付録 昭和35年2月発行
原作:巌龍司/田辺虎男/結城三郎 漫画:南村喬

だが
余白や背景の書き込みと
躍動感ある構図は健在だ。

ただ
本人としては
この漫画の仕事が不本意だったのか
ペンネームを
矢野ひろし
として活動した時期もあったのだ。

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流星剣士  集英社 昭和33年12月発行
矢野ひろし

表紙も中身も
すっかり漫画になっている。
でも
剣士の凛々しい表情や格好いい構え
奥行きのある構図は
そのままだ。

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流星剣士  集英社 昭和33年12月発行
矢野ひろし


漫画家として転身したのは
1年足らずの時期だと思うが
まるで熟練の部類の
漫画のタッチとスムーズなコマ割
流石だ。

これくらいは余裕の仕事
とでも言っていたぐらいの実力者だったのか。


この付録本の裏表紙を見て
あっ!と
ビックリ。

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集英社物語文庫「柳生旅日記」
の広告だが
かつて南村喬として制作していた挿絵作品が
単行本となって出版される告知だ。

柳生十兵衛の勇姿、キリッとした目力!
あの貸本表紙時代と同じものだ。

これは編集者の意図しての掲載か
それとも偶然か
新旧の画風が表裏一体に。


しかしながらその後は
漫画誌の特集記事の口絵
需要は少なかったが絵物語の挿絵など
本来の画業にシフトしていったのだ。





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奇怪な表紙絵に幻想が膨らむ:その2

Posted by モロズミ・ダン on 15.2015 巨匠・アーティスト 0 comments 0 trackback
南村喬先生の
貸本表紙絵を特集しているが
その魅力は伝わっただろうか。

後半は素敵なタイトル一覧も紹介したが
そこで「あれっ」
と気にかかった人もいるかもしれない。

太平洋文庫の巻末一覧では
作品の著作者名が
それぞれ異なる人が明記されているのである。

実は
本編(中身)は各著作者の作品であるが
表紙のみ
別の作画家が一手に引き受けて
画いていたのである。
(厳密に言うと限られた数人が引き受けて)

昔の貸本や付録本ではよくあったことで
実力のある作画家のみが表紙専任となっていた。

売上アップは表紙で決まる!
と言った感じであろうか
南村作品は表紙を飾るのに
うってつけの評価があったのだろう。

ちなみに
「妖気まだら蟇」(作者:青木末雄)の
本編の画風はこんな感じだ。

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妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄

あれれっ
ずいぶん雰囲気が違うのでは・・・

表紙のイメージで思い込んで選ぶと
この落差に
だまされた感が出てしまいそうだ。

個人的には
この漫画チックなタッチも
これはこれで悪くないなと思う。
どちらかと言うと好きな画風だ。

書き込みが少ないのも
当時の業界の背景を推測すると
貸本漫画の原稿料はかなり安価で
短納期であったことなどが推測され
その悪い環境下での創作であれば
逆によく画いているなあとも感じるのだ。

ストーリーはこんな感じ

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妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄

目次とまえがきで
だいたい雰囲気がわかると思うが
最後は蟇が倒されてめでたしとなる話。

漫画としては
極めてオーソドックスな展開だが
タイトルの付け方や表紙の力の入れように
グッときますね。

この太平洋文庫
刊行のコンセプトはしっかりしております。

       2015_0628_213112-DSC03187.jpg

奇怪で幻想的なタイトルと表紙からは
ちょっと繋がりにくいような気もするが
思考力・知識の向上や勧善・懲悪の精神高揚など
使命・責任・誇りをもって取り組んでいる
とのことだ。

さて
今回の記事の冒頭で述べた

貸本収集を一度始めたが
数冊を残して処分してしまった理由の件

であるがそれは
手に負えない本の状態の悪さ
からだ。

貸本であり自分の物でないことをいいことに
マナーの悪さが本を見て読み取れる。

ページの折れや破れは著しく
さらに
ミカンの筋・果汁シミ、鼻くそ(だと思う)や
害虫(ブリちゃんなど)などが押し花風になっていたりする。

ミカンを食べながら本をお手ふき代わりにし
ブリちゃんがいたら本で叩き(そして本に挟み)
鼻くそをこすりつけながら読んで
何食わぬ顔で返却していたのだろう。

集めた貸本は
異物の押し花風はなくとも
どれもこれも
破れや解明できないシミを含め
汚れのコレクションとなっており
メンテナンスに限界を感じ
表紙だけ集めようと決めたのだ。

勿論奇跡的に傷みの少なかった
「妖気まだら蟇」など数冊は残したが。

まっ
表紙そのものは特上の力作揃いだし

都合よく理由付けして妥協したのが
いきさつだ。




奇怪な表紙絵に幻想が膨らむ

Posted by モロズミ・ダン on 05.2015 巨匠・アーティスト 0 comments 0 trackback
まずこの
表紙絵を見ていただきたい。

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妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄/表紙絵:南村喬

少年・青年向け漫画本であるが
戦後から昭和30年前半まで流行った
いわゆる「貸本」である。

まだ本が高価な時代で
貸本屋がビジネスとして充分成り立っており
一般の書店と肩を並べる勢いがあった。
今で言う
レンタルCD,DVDショップみたいな立ち位置か。

貸本の需要はきわめて高かったため
当時は
その貸本専用に企画されていたシリーズ本も
多数出版されていた。

今日は
妖気系貸本の表紙絵と
同類のタイトルの魅力にスポットを当てた
記事である。

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妖気まだら蟇 太平洋文庫 昭和33年発行より
青木末雄/表紙絵:南村喬

50年以上の経年で
傷みが激しいが
結構しっかりしたハードカバーの
製本になっている。

それにしても
この表紙

なんと魅惑的ではないですか!
(↑これを早く言いたく我慢していた)

戦後の劇画調の紙芝居、絵物語、大衆演劇の告知ポスターなど
をイメージさせる雰囲気は昭和浪漫そのもの。

妖しい大ガマと蝦蟇仙人に立ち向かう
キリッとした凛々しい青年剣士。

みんなこちら向きで
空間をギリギリまでギュッと縮めた
ありえない構図も
グッとくる。

作画者は
南村喬(みなみむらたかし) 先生

貸本の特に表紙絵に魅せられて
一時期
南村作品を含め集めていたのだが
訳あってほとんど手放し
今あるのは数冊のみ
(※その理由は後日)

しかし
表紙カバーだけは残し
さらに表紙のみの収集に意気込んだ。

その中から
太平洋文庫(貸本向)
南村作品を
さらに8連発でアップしよう。

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太平洋文庫表紙より
南村喬

この妖しくも迫力満点の画力
いかがであろうか。
格好良さを通り越して
色気すら感じてしまう妖艶さだ!
思わずクラッとしてしまうのは
このところの猛暑のせいではない。

また彩色もよい。
特に赤色の鮮やかさ
と言おうか
妖しさと言おうか
迫ってくるものがあるのだが
当時の印刷インキは鉛などの有害物質も含まれていたので
そういった意味では怪しい色と言えるのかもしれないが。

表紙画もさることながら
タイトルもみんな素敵だと思いません?
「妖気まだら蟇」の
巻末の刊行予定を一部見てみると

2015_0628_213514-DSC03192.jpg

ね!
どれも本編はどんな話だろうと
想像が膨らむ
気に掛かるタイトルが目白押しだ。

フレーズとその響きが
妖しい想像をかきたてるのだ。
「想像」より「幻想」と言った方がピッタリくるのかな。

さらに
タイトル一欄を見てみよう。

最新刊一覧は

2015_0628_213459-DSC03191.jpg

「魔の人食い凧」
蛸ならまだわかるが凧が人を襲うのであろうか
意表をついた恐ろしい話である。

「呪いの将棋駒」(六月の新刊)や
「戦慄ふれ太鼓」など
魔の手は将棋界や相撲界まで伸びているようだ。

単に
「まむし屋敷」
と言うのがあるが
マムシがいるだけなら
そんなに難儀な話ではない
専門業者に捕獲を頼むだけだ。
捕獲後は
煎じて精力増強といきたいところだ。

既刊一覧もみてみよう。

2015_0628_213616-DSC03193.jpg

「みみずく妖婆」
みみずくって
小さめのフクロウみたいなイメージで
か弱い婆さんのイメージなのだが
いかがなものか。

他にも
「狐使い妖婆」
「鬼婆屋敷」
など結構、婆さんは主役級の活躍で
爺さん系タイトルは見当たらない。

「怪奇五光狸」
「怪奇五色龍」
「七色の妖鏡」
この後の既刊一覧では
「五色蛇魔殿」
など鮮やかな多色展開のパターンも存在する。

「涙の山びこ」
「涙の黒汐」
と涙シリーズもあるが
青春物語系怪奇漫画であろうか。


既刊一覧は続く

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ここにも婆さん登場
「地獄耳の妖婆」
単なる耳の良い婆さんの話
ではないとは思うが
地獄というフレーズが入っただけで
もう怖い感じがする。

ともあれ
表紙カバーは多数所有しているが
本自体はほとんど持っていないので
どんな話なのかは
勝手に想像するしかない。


「妖笛九官鳥」
「黒やもりの秘宝」

妖気ものには普通採用されない生き物も
主役に採用されているが
マンネリ化回避の苦肉の抜擢?
一般的には
龍、蝙蝠、蛇、蜘蛛、ガマ、狐、狸、猫あたりが
常連なのだが。

「魔の蛸地獄」
の蛸はどちらに分類できるか
微妙な立ち位置だ。

さらに既刊は続くが
それにしても凄い刊行数です!

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「魔の人魚屋敷」
人魚も陸上生活が可能であるかどうかも
興味深い作品。

「妖異鋸(のこぎり)魔殿」
「三つ目錐(キリ)の恐怖」
「恐怖の歯車屋敷」
と工具部品系のシリーズへと
恐怖の範囲を広げている。


インパクトあり過ぎの貸本のタイトル
またいつか
もっと統計的に
分類してみたい衝動に駆られる分野だ。

先に紹介した
表紙カバーの裏側にも
カットが掲載されているのだが
これも秀逸で魅力的な画なので
最後に集合画像でアップしておこう。

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