ノートの表紙絵で昭和の風景を鑑賞する

Posted by モロズミ・ダン on 20.2017 文具 0 comments 0 trackback
お気に入りの表紙を揃えるのは楽しかった

子供の頃
割と自分の好みで買い揃えることができた
文具小物。

特に学習ノートは
校則縛りの厳しい中で
表紙絵で自己主張できる数少ないアイテム
であったと思う。
(但しアトムや鉄人などの漫画系は
学校持ち込み禁止だった)

ちょうど今頃の新学期前は
どんなノートを使ってやろうかと
学校前の文具店で
真剣に品定めをしていた時期だ。

当時の表紙絵といったら
学校・生活行事に勤しむ優等生男子女子の図であったり
鮮やかな風景であったり、人気の乗り物、建造物などなど
題材も幅広かった。

学習ノートと言えば
「ジャポニカ学習帳」じゃないの?
との声も聞こえてくる。
確かにそうだが
それが発売された昭和45年の頃は
私はすでに小六ぐらいになっていたので
あの写真版の草花や昆虫の図鑑的表紙には
ほとんど馴染みがなかった。

なので誠に勝手ながら
今日は昭和20年代後半から
30年代のノートの表紙絵
特に風景物を中心に集めて
あらためて鑑賞し
懐かしんでみたい。

(※ノートは発行年月日の記載がないため
年代的な記述は表紙の題材からの推測です)


写真版の表紙は高級品

カメラが貴重な高額品で
写真をプリントするにも写真屋さんに現像に出して
などと手間と日数と高いコストがかかった時代。
写真=高級品
のイメージがあった。

ノート自体はイラスト版も写真版も値段に差はなかった
となると写真版お買い得感があったと思う。

2017_0319_193653-DSC04388.jpg
㈱吉原工業所

昭和33年に建造された東京タワー。
展望台と同じ目線からの東京都下のパノラマ風景だ。
ウルトラQのペギラの目線でもある。

大人気だった東京タワーは
お土産品のみならず
多くのアイテムが商品化された。

2017_0319_193712-DSC04389.jpg
上田ノート㈱

表紙を飾る列車と言ったら
「ひかり号」がハズレのない手堅いところだが
「こだま号」だ。
これは企画担当者がマニアックだった訳ではなく
おそらく昭和38年以前に発売されたものだろう。
東海道新幹線は昭和39年運行開始だった。

背景の富士山は構図として座りがいいし
美しいし迫力あるしで
ついつい使いたくなる素材だ。

2017_0319_193808-DSC04391.jpg
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クロワシ紙製品㈱

港の風景は
どこにも地名表記がないが
建造物の雰囲気から
日本のどこかであるようだ。

繁華街の方は
デパートの垂幕に「六甲山・・・」
の文字が読み取れるので大阪だ。
見えづらいが屋上のアドバルーンは
昔は繁華街であれば必ず見かけることができた。

続いては
都会から離れ
雪山へ

2017_0319_193828-DSC04392.jpg
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クロワシ紙製品㈱

学級委員長でもやっていそうな
優等生男女の模範的活動シーンだ。

このような構図パターンは
早くから
学年別学習雑誌の表紙はこうだ!
といったお決まりな感じで
多くの出版社が取り入れていた。


昭和30年前後はイラスト版が主流

雪山続きで
さらに年代を溯ってみてみよう。
ここからはイラスト版が中心に。

2017_0319_193946-DSC04396.jpg
マルミヅノート㈱

マッターホルンと明記がある。
まだ一般家庭にエアコンがなかった時代なので
暑い夏などは
こんな涼しげな風景が机の上にあると
ちょっとばかり気休めになった。

雪山系は結構多く・・・

2017_0319_193927-DSC04395.jpg
キンセイ印

同じくアルプス系ではないかと
山岳電車の形式が欧州っぽいデザインだ。
アニメのハイジが放送されるのは
まだ15年ぐらい後になる。


2017_0319_193908-DSC04394.jpg
㈱三栄社 オリンピック学習帳

裏表紙に
オリンピック選手派遣費獲得協賛品
とあり
ノート売り上げの一部が選手派遣費の一部になる
との説明が。

また裏表紙にクイズがあり
「来年のオリンピックはどこで開催?」
(答:ヘルシンキ昭和27年開催予定)
から
昭和26年発売であることがわかった。


山の風景と言えば・・・

冒頭の
こだま号の表紙でも採用されていた
やはり富士山を取り上げない訳には
いかないでしょう。
日本一の山であるし。

2017_0320_083744-DSC04412.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

昭和34年発売
サイドを
大き目の螺旋リングで綴じられているが
説明は後ほど。

2017_0319_194052-DSC04399.jpg
文栄堂紙製品㈲

憧れの乗り物ヘリコプターと富士山
人気アイテムをWで押さえてます。

2017_0319_194112-DSC04400.jpg
文栄堂紙製品㈲

後に「最後の大型プロペラ旅客機」と言われた
ボーイング377(昭和22年頃就航)。
「空のホテル」との異名も持つ2階構造。
客室内にはベッドや洗面室
またバー用のギャレーやソファを併設したラウンジを装備する等
今でいうセレブ仕様の構造だ。
(この機種は日本の航空会社には採用されなかった)

このアメリカ航空技術の粋を集めた最新機B377と
日本の富士山と組み合わせ。
しかも銭湯絵を思わせるような和調の富士で
意表を突く構成にじわじわと魅力を感じてくる。

2017_0320_233745-DSC04425.jpg
「少年」付録 「科学の驚異 世界最新乗物画帳」 光文社昭和24年7月発行
小松崎茂 

この豪華旅客機
昭和20年代中頃に
日本の学習雑誌や漫画など少年向けのメディアにも
頻繁に紹介されるようになった。
参考資料として1冊アップしてみた。

乗物画帳の表紙絵は小松崎茂先生の作品
リアルな描写なので気づいたのだが
主翼とプロペラエンジンは
日本を空襲で苦しめたB29のそれとそっくりだ。
太平洋戦争後も間もない時期だし
航空会社も同じだし
設計流用していることも充分ありえるだろう。

となるとこの表紙の
旅客機と富士山
ちょっと複雑な意味合いを含んだ
組み合わせとなるか。


かっこいいアーキテクチャな風景

続いては
建造物系の表紙をいくつか

2017_0319_194203-DSC04402.jpg
しおりの学習帖本舗

背景は立派な大型の橋
子供達のうしろの石碑には
北原白秋の
「あめがふるゝヽ城ケ島のいそに・・・・」
の詩がある。
神奈川県三浦半島の城ケ島を背景に詠ったもの。

この橋は城ケ島大橋だ。

おそらく
北原白秋以外にも
たとえば宮沢賢治の「雨ニモマケズ・・・・」
の石碑を背景にしたノートの表紙なんかも
あったんじゃないだろうか。
やはり学習ノートだから
文化人的要素を含めた題材は
シリーズ化していたかもしれない。


2017_0319_194223-DSC04403.jpg
タイヨー学習帖

カッコイイ鉄橋を
蒸気機関車が威風堂々走る図。

汽車と鉄橋
この二つは切り離せない組み合わせ。
汽車系の童謡、唱歌で思いつくのが
3曲程あるが
いずれも鉄橋を走る汽車が歌われている。

私はギリギリ蒸気機関車に乗れた世代だ。
幼稚園の頃(昭和39年頃)
両親の実家(長野)へ帰省するときの
かすかな記憶がある。
夏の暑い日でもちろん冷房もなかったので
窓は全開。
碓氷峠のあたりでトンネルが多くあり
そのたびにトンネル内で窓から煙が入らないように
大人たちが窓の開閉をせわしなくしていたのが
ちょっと滑稽だったことを憶えている。

童謡の歌詞にあるように
「トンネル鉄橋トンネル鉄橋トンネルトンネル・・・・」
その度の窓開閉だった。

小学生になってからは
完全に電気機関車(気動車だったか?)になってしまい
蒸気機関車も
あの滑稽なシーンも
もうみれなくなっていた。

この表紙を見ていると
当時の力強い走行音と
「ボーッ!」という
雄叫びのような汽笛が聞こえてきそうだ。


ダムのかっこ良さは人気だった?

建造物系でも
ダムの表紙が目立つのでいくつか紹介しよう。

2017_0319_194318-DSC04405.jpg
2017_0319_194327-DSC04406.jpg
日東ノート

最近では諸問題でダム建設の是非が問われているが
昭和20年代中頃から30年代にかけては
巨大ダム(あわせて水力発電所)が相次いで建設されていた。
建設技術の粋を集めた大型プロジェクトは
日本の高度経済成長の柱のひとつでもあったのだ。
そしてその壮大な風景は
数多く観光名所としても(ダム湖を含め)脚光を浴びていた。

そんな人気の題材を
ノートの企画担当者は見逃さなかったのだろう。
表紙への採用頻度は高かったようだ。


2017_0319_194341-DSC04407.jpg
2017_0319_194359-DSC04408.jpg
タイヨー学習帖

残念ながら
具体的な表記がないので
2冊とも
どこのダムであるかは
わかりかねるが
マニアの方がいたら聞いてみたい。


ノート表紙の題材の傾向は・・・

ダムの写真版もあった。

2017_0320_083846-DSC04413.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

「黒部峡第二発電所」とある。
黒部ダムの一端の風景だと思うが
できれば高さ180メートル以上ある
この超大型ダムの全景を見せてほしかったな。

前半でお見せした写真版富士山の表紙と同様
サイドを大きな螺旋リングで綴じているが・・・

2017_0320_083657-DSC04411.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

これは
極東ノートの営業用見本帳である。
おそらく営業マンが持ち歩いて取引先で注文を受けたり
または小売店用の発注の際のカタログとして
活用されたものだろう。

約3センチの厚さの見本帳には
31冊分の表紙+中身1枚+裏表紙が綴じられている。

1959と表記があるので
昭和34年度版だ。58年前だ。私の歳と同じだ。

この1社(1冊)ではあるが
当時の表紙題材の傾向がわかるぞ!
と早速
カテゴリ別に整理してピックアップしましょう。

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極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

①優等生男女系・・・11冊/31
  
2冊目のロープウェイの表紙は
風景に分類するか迷うところだが。

2017_0402_204248-DSC04426.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

②風景・・・8冊/31
 先にアップした富士山、黒部ダムなど。

2017_0320_090216-DSC04418.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

③ワンポイントシンプル系・・・5冊/31

2017_0320_090003-DSC04415.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

④著名人系・・・1冊/31

2017_0320_091003-DSC04419.jpg
極東ノート㈱見本帳  (現:㈱キョクトウ・アソシエイツ)

⑤文化人形系・・・6冊/31


文化人形がブームだったので
多くなるのは必然であっただろう。

風景8冊のうち
ダムがしっかり入ってるてことは
やはりダム採用率は高かったのかもしれない。


もちろんノート以外でも
ダムを取り上げる学習用出版物も多かった。
そこで学習雑誌を2冊。

2017_0319_193357-DSC04384.jpg
「科学クラブ」4号 ㈱東雲堂 昭和34年1月発行
「こども科学館」7号 ㈱国際情報社 昭和35年12月発行


2017_0320_140550-DSC04420.jpg
「こども科学館」7号 ㈱国際情報社 昭和35年12月発行

山と川を中心とした
パノラマ図で資源活用の説明をしている。

2017_0320_143007-DSC04424.jpg
2017_0320_142921-DSC04423.jpg
「こども科学館」7号 ㈱国際情報社 昭和35年12月発行

ダムと発電所も数か所あって
位置関係もよくわかる。

2017_0319_193452-DSC04385.jpg
2017_0402_220139-DSC04428.jpg
「科学クラブ」4号 ㈱東雲堂 昭和34年1月発行

電気の使われ方フローチャートと
水力発電の細かな解説まで載っている。

2017_0319_193544-DSC04386.jpg
「こども科学館」7号 ㈱国際情報社 昭和35年12月発行

ダムは学習教材としても
重点的な位置付けであったようで
力の入れ具合が裏表紙にも。

全面に爽快なその風景が載っていた。


最後にこの1冊。

2017_0319_194831-DSC04410.jpg
タイヨー学習帖

社の字からして昭和20年代前半だろうか。

ダム系かなと思って
ストックから粗選りしていたが
よくみてみるとダムではなく
滝だ。
(ダムだと最後うまく話がまとまったのだが)

でも
不思議な雰囲気なので
キープしておいたのだが
どのタイミングで紹介しようかと思案していた。
(最後に無理矢理入れ込んだ感じだ)

どこかの景勝地なのか
それも日本か外国か?

ヘリコプターと崖上の発電所?
いいアクセントになっている。

海に浮かぶ船は玩具か本物か
遠近感を混乱させる。

奥の方の水の流れも不自然だし
架空の風景なのか
だまし絵のようにも見える。

ついつい細部まで見入ってしまい
徐々に魅力に引き込まれる
額装してもいいレベルの秀作だ。
(個人的に)

意表を突かれる風景の発見があるので
学習ノート鑑賞は楽しい。

こんな1冊を手に入れた日には
友達に自慢しまくる昭和時代の自分
が想像できる。







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